宇宙誕生直後のビッグバンやインフレーションってどんな現象?
今回は、「インフレーション宇宙論の解説」です。
多くの人が「宇宙の始まり=ビッグバンという大爆発」というイメージだと思いますが、実はその前段階として「インフレーション」と呼ばれる超高速の急膨張が存在したという説が現代の主流となっています。
では、なぜ「ビッグバン」という名前や、そういう「宇宙の始まり=ビッグバンという大爆発」というイメージが定着したのか、さらに、「インフレーション宇宙論」の登場によって「ビッグバンの前後」に対する人類の認識はどのように変化したのかを、今回も【歴史学者視点AI】と【物理学者視点AI】の対談で解明してもらいましょう。
「ビッグバン」という命名の背景
歴史学者の視点から、この「ビッグバン」という言葉のルーツと、人類が宇宙の始まりをどう認知してきたかについてお話しいたしましょう。
まず、非常に興味深いのは、「ビッグバン(Big Bang)」という言葉自体が、もともとは科学的な嘲笑や揶揄から生まれたという歴史的背景です。20世紀半ば、宇宙が膨張しているという観測事実を巡り、科学界は二つの陣営に分かれていました。宇宙には始まりがあり膨張を続けているとする「膨張宇宙論」と、宇宙は過去も未来も平均的には変化しないとする「定常宇宙論」です。定常宇宙論の代表格であった天文学者フレッド・ホイルは、ラジオ番組で対立する膨張モデルを「要するに、宇宙が『でっかいドカン(Big Bang)』で始まったという考え方だろ?」と半ばバカにして揶揄したのです。
しかし、言葉の皮肉とは裏腹に、このキャッチーな「ビッグバン」というフレーズは一気に定着しました。そして、1964年に宇宙マイクロ波背景放射(CMB)が発見されたことで、火の玉宇宙の証拠が示され、皮肉だった「ビッグバン」という命名がそのまま標準的な理論名として定着したわけです。
人類の認知史観点で見れば、古代の創世神話から連なる「始まりの瞬間」への探求心が、科学という言語を得た歴史的転換点だったと言えます。初期の認識では「火の玉爆発こそが一番最初の瞬間」だと考えられていたのです。
「ビッグバンが宇宙の最初の最初だった」は、過去の古典的イメージ
言葉のルーツや認知の変遷についての解説、まことに見事です。しかし、物理学および計算科学の観点から言えば、「爆発が一番最初の瞬間であった」という理解は、すでに数式と観測データによって完全に更新されています。ここから視点を大きく換転させましょう。
熱い火の玉宇宙(ビッグバン)が「最初」であったと仮定すると、現代の物理学は重大な矛盾にぶち当たります。それが「平坦性問題」と「地平線問題」です。
宇宙の温度はどの方向を見ても約2.725ケルビン(記号・K)(絶対零度0Kを基準とする絶対温度の基本単位)で異常なほど均一です。しかし、光の速さをもってしても情報が伝わり得ないほど離れた領域同士が、なぜ寸分違わず同じ温度になり得たのか? 普通の大爆発では説明がつかないのです。
そこで登場するのが、佐藤勝彦氏やアラン・グース氏らが提唱した「インフレーション宇宙論」です。数学的に言えば、宇宙は誕生直後の 10の−43乗秒後から、あるいはそれ以降のごく初期という一瞬の間に、真空の負の圧力(暗黒エネルギーに似た状態)によって指数関数的(インフレーション的)に急激な膨張を起こしました。その倍率は または 10の26乗倍以上、例えるなら原子核のサイズが一気に銀河系以上の大きさに広がるほどの異次元の膨張です。
この急膨張によって、空間のあらゆる「シワ」や「温度の不均一」が引き伸ばされて平坦化されました。そしてインフレーションが終わる際、保持されていた潜熱が解放され、空間が劇的に加熱されました。この「再加熱(リヒート)」現象こそが、熱い火の玉状態――すなわち私たちが「ビッグバン」と呼ぶ状態の本当の正体なのです。
つまり、物理学における結論として:【前】インフレーション(冷たくて急激に広がる空間)【後】ビッグバン(熱い火の玉宇宙の始まり)という明確な因果の前後関係が存在します。「ビッグバンが宇宙の最初の最初だった」というのは、すでに過去の古典的イメージに過ぎないのです。
※ 地平線問題(情報の伝達速度の限界):宇宙の端から端まで、温度や密度が驚くほど均一になっています。しかし、初期の宇宙が通常のペースで膨張していただけだとすると、お互いに光の速さ(情報の伝達速度)を超えて離れていた領域同士は、過去に一度も接触したことがないため、「なぜ同じ温度や密度なのか」を説明できません。
※ 平坦性問題(初期値の奇跡的調整):現在の宇宙の空間曲率はほぼ「平坦(フラット)」です。これをインフレーションなしで説明しようとすると、宇宙誕生のほんの初期において、エネルギー密度や膨張率が「1の位から何十桁も狂いのない、奇跡的な微調整」でスタートしていなければならないことになります。確率論的にあまりに不自然です。
「ビッグバンが宇宙の始まり」が常識ではなかったの?
かつては、、、私にとってはつい最近まで、「宇宙の始まり=火の玉の大爆発(ビッグバン)」と考えられていました。しかし、どうやら現代の標準宇宙論においては、ビッグバンは最初の瞬間ではないというのが主流となっているそうです。
極微の宇宙が光速を遥かに超える勢いで急膨張した「インフレーション」が存在し、そのエネルギーが熱へと変換された結果として誕生したのが「火の玉宇宙(ビッグバン)」なのです。もちろん、仮説上の話ではあるのですが、宇宙の本当の最初の1ページは、大爆発の前の「静かなる超膨張」にあったというのが、最新理論らしいです。
この「インフレーション理論」は、「なぜ初期の宇宙がこれほど均一で平坦なのか」という不自然さを、「一瞬の超急膨張(インフレーション)によって空間を引き伸ばしたからだ」という動的なメカニズムで解決するために導入された理論です。もちろん、宇宙論全般に言えることですが、有力な『仮説』であり、インフレーションを否定する仮説の試みもあります。
ただ、科学界が『インフレーション宇宙論』を支持している最大の理由としては、「観測による検証可能性」にあります。宇宙の温度のわずかな揺らぎや、原始重力波の痕跡といった「将来観測で確かめられる予測」を具体的に残します。これまでの宇宙望遠鏡による精密観測は、インフレーションが予測するパターンと驚くほど見事に一致してきました、、、
つまり、インフレーションがあったと考える方が「観測結果とのつじつま合わせ」にちょうどいい、、、というか、科学的にはそれこそが重要視されるということです。ただ、このインフレーションをさらに過去へ巻き戻していくと、結局は密度や温度が無限大になる「特異点」に行き着いてしまいます。特異点は、数学的には方程式が破綻する「バグ」のようなもので、理論的には大きな欠陥ですが、それ以上に「観測結果との検証可能性が重要」ということが、この『インフレーション理論』でのポイントですね。

